支聯會と元幹部3人に実刑、団体には罰金150万香港ドル
香港の西九龍法院(暫代高等法院=高等法院の代わりとして開かれた法廷)は2026年9月11日、すでに解散した民主派団体・支聯會(1989年設立。天安門事件の犠牲者を追悼する「六四」集会を1990年から毎年主催し、2021年9月に解散)と、その元幹部3人に対して刑を言い渡しました。罪名は香港国家安全維持法(国安法)の煽動顛覆国家政権罪、つまり「他人をあおって国の政権を転覆させようとした罪」です。香港メディアHK01の報道(2026年9月12日閲覧)によると、言い渡された内容は次の通りです。
- 鄒幸彤氏(元副主席):禁錮7年3カ月
- 李卓人氏(元主席):禁錮7年
- 何俊仁氏(元副主席):禁錮5年2カ月
- 支聯會(団体として):罰金150万香港ドル
審理を担当したのは、国安法事件を扱う指定裁判官3人(李運騰、陳仲衡、黎婉姬の各裁判官)による合議体です。有罪の認定はこれに先立つ2026年8月21日に示されており、その対象は李卓人氏・鄒幸彤氏と団体としての支聯會でした(何俊仁氏は開廷前に罪を認めており、この裁決の対象ではありません)。9月11日に決まったのは具体的な刑期と罰金額、つまり量刑の中身です。日付も手続きの段階も異なる点に注意してください。
量刑の組み立て:起点7年6カ月からの差し引き
今回の判決で注目されるのは、量刑の組み立てが数字で見える形で示されたことです。裁判所は3人に共通する量刑の起点(起始刑期=計算の出発点となる刑期)を7年6カ月と置き、そこから各被告の事情に応じて差し引く方式をとりました。HK01の報道(2026年9月12日閲覧)による減刑の内訳は次の通りです。
- 何俊仁氏:開廷前に罪を認めた(認罪)ことで22カ月の減刑
- 李卓人氏・何俊仁氏:21年間の公職での奉仕を評価してそれぞれ3カ月の減刑
- 3人とも:多数の事実関係を争わずに認めたことで、それぞれ3カ月の減刑
起点の7年6カ月からこれらを差し引くと、前述の7年3カ月・7年・5年2カ月という刑期になります。服役を終える時期は、何俊仁氏が最短で2028年4月、李卓人氏が2029年9月、鄒幸彤氏が2030年1月と見込まれています(いずれも同報道が伝える見通しで、確定した出所日ではありません)。
「情状が重い」(情節嚴重)と判断された理由
国安法の煽動顛覆国家政権罪は、犯行の情状の重さによって量刑の区分が分かれます。裁判所は本件を、そのうち重い側にあたる「情節嚴重」(日本語でいえば「犯した事情が重大」な区分)と認定しました。主な理由として次が挙げられています。
- 社会が不安定な雰囲気のなかで行われた、計画的(有預謀)な言動であること
- 煽動にあたる行為が14カ月にわたり、さまざまな活動やメディアを通じて継続したこと
- 被告3人がいずれも社会的に著名な人物で、人を動かす力と影響力を持つと認められること
- 国安法の施行後も、姿勢を改めずに行為を続けたこと
このほか、国家の安全と公共の秩序により大きなリスクをもたらしたこと、「臨崖勒馬」(崖の手前で馬を止める=思いとどまること)を拒んで抗争の姿勢を貫いたことも理由に挙げられています。
また裁判所は、支聯會が六四追悼集会や展示などの活動を通じて掲げてきた「一党独裁の終結」という綱領について、2018年に改正された中国の憲法に違反するものだと認定しています。
香港で働く日本人・日系企業にとっての読みどころ
この判決の実務的な意味は、条文の上では「情状が重い」としか分からない区分の実際の重さが、量刑の起点7年6カ月、実刑5年2カ月〜7年3カ月、団体に対する罰金150万香港ドルという具体的な数字で示された点にあります。解散済みの団体そのものに罰金が科された点も含め、量刑の水準をうかがう材料になります。
もう一点、企業の法務・コンプライアンス担当者にとって参考になるのが、裁判所が重さを測るときに何を見たかです。挙げられた理由は、いずれも「発言が一度あったかどうか」ではなく、計画性・継続した期間・その人物の影響力・法施行後に姿勢を改めたかという要素でした。本件は煽動にあたる言動が14カ月にわたって続いたと認定された事案であり、個人の一回の発信にそのまま当てはまる話ではありませんが、香港で組織的な発信や集会・団体活動に関わる際に、司法がどの角度から評価するのかを知る手がかりにはなります。
なお、今後の展開には未確定の部分があります。HK01の報道(2026年9月12日閲覧)によると、支聯會の前常務委員・劉家儀氏は、李卓人氏と鄒幸彤氏がいずれも控訴する意向だが、詳細は弁護士と相談する必要があると述べています。これは前常務委員の話として伝えられたもので、本人や弁護団による公式な表明ではありません。実際に控訴するか、また控訴した場合の結果は、2026年9月12日時点でいずれも分かっていません。
まとめ
2026年9月11日の判決で、支聯會事件は量刑まで言い渡されました。鄒幸彤氏7年3カ月、李卓人氏7年、何俊仁氏5年2カ月、団体には罰金150万香港ドル。量刑の起点は7年6カ月で、社会が不安定ななかでの計画性・14カ月に及ぶ継続・著名人としての影響力・法施行後も姿勢を改めなかったことなどが、「情節嚴重」と判断した根拠として挙げられています。
刑期や罰金は控訴審などで変わる可能性があり、控訴の有無自体も本稿執筆時点では確定していません。今後の進展は、香港の司法機構が公開する判決書や信頼できる報道など、最新の公式情報で必ずご確認ください。
出典
- 〔HK01〕支聯會案|鄒幸彤判囚7年3個月 李卓人7年 何俊仁5年2個月(2026年9月12日閲覧)
- 〔HK01〕支聯會案|李卓人鄒幸彤罪成 官斥拒懸崖勒馬一意孤行抗爭立場(2026年9月12日閲覧)
- 〔HK01〕支聯會案|前常委指李卓人與鄒幸彤擬上訴 李妻:判刑太重(2026年9月12日閲覧)
- 〔HK01〕支聯會案|司徒華創立聲援民運 核心成員違《國安法》被捕後解散(2026年9月12日閲覧)

