政府統計處(Census and Statistics Department)が2026年8月18日に発表した暫定値によると、2026年年中の香港の人口は751万8,300人となり、2025年年中の749万8,900人(修訂値)から1万9,400人、率にして0.3%増えました。
ただ、増えた中身は「生まれた人」ではありません。この1年間の出生は2万9,700人にとどまり、死亡5万100人を大きく下回って2万400人の自然減。それを上回る3万9,800人の純移入(流入が流出を上回った分)が、全体をプラスに押し上げた形です。香港で働き暮らす日本人読者の多くも、数字のうえではこの「移入」側に数えられる存在です。
発表された数字の中身
2026年年中の751万8,300人の内訳は、常住居民(Usual Residents)が725万2,800人、流動居民(Mobile Residents)が26万5,500人。あわせて公表された2025年年末人口の修訂値は750万8,700人(常住居民724万2,100人・流動居民26万6,600人)でした。2026年年中の数字は暫定値、2025年年末の数字は修訂値で、いずれも2026年8月時点のものです。
ここで一点、読み違えやすい落とし穴があります。2025年8月に発表された前年の暫定値は752万7,500人でしたが、この数字と今回の751万8,300人を並べて「人口が減った」と読むのは誤りです。人口統計は後から修訂されるため、今回の公報が比較対象としているのは修訂後の749万8,900人。あくまで0.3%の増加です。
出生数、統計の系列で初めて3万人を下回る
今回もっとも注目されたのが出生数です。〔South China Morning Post〕の報道によると、2万9,700人は前年同期の3万5,200人から15.6%の減少で、1962年に始まった年中人口統計の系列で初めて3万人を下回りました。それ以前の最低は2023年の3万2,600人だったとされています。
人口を支えているのは人材誘致と単程証
自然減2万400人に対し、香港居民の純移入は3万9,800人。政府スポークスマンは、人材誘致・労働力輸入の各種措置が世界各地から人を香港に呼び込み、人口の自然減の影響を相殺し続けている、という趣旨の説明をしています。
この純移入の内訳は公報の本文にはありませんが、〔South China Morning Post〕の報道によると、単程証(一方通行許可証)の保有者が2万3,900人、その他の香港居民が1万5,900人。単程証は1日あたりの定数が150人とされています。つまり、人口の下支えは中国本土からの定数枠と、就労・人材誘致ルートの双方が担っている構図です。
今回の発表は、人口の増減が出生ではなく移入の規模によって左右されるという構図を、数字ではっきりと示しました。人材誘致や労働力輸入の措置を政府が実績として位置づけていることは、在住者・日系企業が採用や人員計画の前提を考えるうえでの背景材料になります。同時に、出生数の減少は、数年後以降に学齢期を迎える子どもの数にも計算上は波及していく変化です。
出産支援策は、どこまで届いているか
出生をめぐる香港の主な支援策としては、2023年の施政報告で3年間の時限措置として導入された新生嬰兒獎勵金(Newborn Baby Bonus)があります。新生児1人につき一括2万香港ドルが支給される制度で、対象は2023年10月25日から2026年10月24日までに香港で生まれた子。申請は出生登記の際(出生後42日以内)に行い、間に合わない場合も出生日から6暦月以内とされています。
ただし資格要件として、申請時点で父母のいずれかが香港永久性居民(Hong Kong Permanent Resident)であることが必要です。そのため、永住権を持たない駐在員などの在住日本人は、香港で出産しても基本的にこの給付の対象にはなりません。なお2026年10月24日より後への延長については、公式ページ(最終改訂2025年9月18日)に案内が出ておらず、2026年8月時点では未確定です。同じ施政報告では、新生児と同居する納税者の「居所貸款利息扣除」または「住宅租金稅項扣除」の上限を10万香港ドルから12万香港ドルへ引き上げること(2024/25課税年度から、その子が18歳になるまで)、居屋の「家有初生優先選樓計劃」や公屋の輪候時間1年短縮なども打ち出されました。
こうした支援策の効き目については、〔South China Morning Post〕の取材に対し、香港大学の葉兆輝(Paul Yip Siu-fai)教授(人口健康)が、現行の策は出生率を動かすには「not enough to move the needle」(力不足)との見方を示し、そのうえで2万香港ドルの奨励金は象徴的な支援として維持すべきだと述べています。また立法会議員の陳家珮(Judy Chan Kapui)氏は、第2子に的を絞った奨励として3万香港ドルへの増額や、未婚女性への体外受精(IVF)の開放を提案しています。ただしこれは議員個人の提案段階で、政府として決定・実施されたものではありません。
まとめ
2026年年中の香港の人口は751万8,300人で前年から0.3%増。しかし出生は2万9,700人と統計の系列で初の3万人割れとなり、自然減2万400人を純移入3万9,800人が埋めたのが実態です。「人口は増えているが、増やしているのは出生ではなく移入」という構造が、数字ではっきりと表れた発表でした。
なお2026年年中の数値は暫定値で、香港の人口統計は後から修訂されます。金額や要件を伴う制度(新生嬰兒獎勵金の対象期間など)も含め、最新の情報は公式サイトで必ずご確認ください。
出典
- 香港特別行政区政府新聞公報(政府統計處)「Mid-year population for 2026」(2026年8月18日発表)(閲覧日:2026年8月19日)
- 〔South China Morning Post〕Hong Kong births fall below 30,000 for first time, even as population edges up(2026年8月18日)(閲覧日:2026年8月19日)
- 香港特別行政区政府新聞公報(政府統計處)「Mid-year population for 2025」(2025年8月14日発表・本文中の752万7,500人の出所)(閲覧日:2026年8月19日)
- 政務司「新生嬰兒獎勵金(Newborn Baby Bonus)」公式ページ(閲覧日:2026年8月19日)
- 行政長官2023年施政報告「鼓勵生育」(閲覧日:2026年8月19日)

