社会

香港MPF「全自由行」第1段階が12月21日施行へ 対象は2025年5月1日以降に就職した従業員

香港政府は2026年10月16日、香港で働く人が加入する強制の退職積立制度「強制性公積金(Mandatory Provident Fund、MPF)」について、「全自由行(Full Portability)」第1段階の施行日を12月21日とする開始通知(Commencement Notice)を官報に掲載しました。全自由行とは、雇用主が選んだMPF計画に置かれてきた雇用主拠出分を、従業員が自分で選んだ計画へ移せるようにする制度改正です。方針自体は以前から示されてきたもので、今回新たに決まったのは第1段階の施行日です。

第1段階の対象は、2025年5月1日以降に今の勤務先で雇用が始まった従業員に限られます。対象者は、今の勤務先で雇用主が拠出してきた強制拠出分の積立金を全額、自分で選んだ計画へ移せるようになります。一方、2025年5月1日より前から今の勤務先で働いている人は第1段階の対象外で、第2段階を待つことになります。MPFに加入している香港在住の日本人にとっては、まず「自分の就職日がどちらか」で関わり方が分かれるニュースです(内容は2026年10月時点)。

第1段階で何ができるようになるのか

2026年10月時点で公表されている第1段階の主な内容は次のとおりです。

  • 対象者:雇用開始が2025年5月1日以降の従業員(公報では「New EEs」と呼んでいます)。区切りは拠出した時期ではなく、就職日(雇用開始日)です。
  • 移せるもの:今の勤務先での雇用主の強制拠出分(employer mandatory contributions)から生じた積立金(accrued benefits)の全額。
  • 移し方:雇用主のMPF計画にある拠出口座(contribution account=在職中の拠出が入る口座)から、自分で選んだ計画の個人口座(personal account)へ移します。
  • 頻度:暦年(1月〜12月)ごとに1回。移管元の計画の規則が認めていれば、1年に複数回移すこともできます。

施行日の「年」と、法的な位置づけ

公報本文では、施行日は「12月21日」とだけ書かれており、年は明記されていません。ただ、財経事務及庫務局長(Secretary for Financial Services and the Treasury)の許正宇氏は談話で、今回の措置は2026年の施政報告(Policy Address=行政長官が毎年示す施政方針)で掲げた「2026年内に実施」という公約を果たすものだと述べています。このことから、施行は2026年12月21日と読めます。

根拠となるのは、《2025年強制性公積金計劃(一般)(修訂)規例》(Mandatory Provident Fund Schemes (General) (Amendment) Regulation 2025、L.N. 206 of 2025)です。MPF計画の一般的なルールを定める規則の改正版で、立法会(Legislative Council=香港の議会)が2025年9月26日に制定していました。今回の開始通知は、この改正規則がいつから効力を持つかを指定するものです。

開始通知は10月21日(水)に立法会へ提出され、消極的審査(negative vetting)にかけられます。消極的審査とは、立法会が一定期間内に修正などを議決しなければ、そのまま効力を保つ審査方式です。2026年10月17日時点では、審査はこれからの段階です。

第2段階はまだ先

第2段階は、第1段階の対象にならない残りの従業員が対象です。政府は立法の準備を進めており、2027年中頃までに改正案を立法会へ提出する予定としています。これは改正案を提出する時期の見通しであり、第2段階の施行時期ではない点に注意が必要です。

政府が掲げる狙い

許局長は談話で、第1段階によって新しく就職した従業員が自分のMPFを管理する主導権が強まり、運用への積極的な関与や市場での競争が促され、手数料引き下げの余地が生まれるとの考えを示しました。あくまで政策の狙いとして語られたもので、実際の手数料水準がどう動くかは各計画の今後の対応次第です。

施行前に確認しておきたいこと

12月21日の施行を前に、次の点を押さえておくと判断しやすくなります。

  • 従業員の方:雇用契約書などで、今の勤務先での雇用開始日が2025年5月1日以降かを確認しましょう。該当しない場合は第1段階の対象外です。
  • 対象になる方:今の雇用主の計画と、移管先の候補となる計画について、手数料や選べるファンドを比べておくと、施行後に動きやすくなります。移管元となる今の計画で1年に複数回移せるかどうかも、確認しておきたい点です。
  • 日系企業の人事・経理担当者の方:2025年5月1日以降に採用した従業員から問い合わせが来る可能性があります。対象は就職日で区切られるという線引きを、社内で共有しておくとよいでしょう。

具体的な申請の手順や書式は、強制性公積金計劃管理局(Mandatory Provident Fund Schemes Authority、MPFA。通称「積金局」)や、加入先の受託者(trustee=MPF計画を運営する金融機関)の案内で確認してください。

まとめ

MPF全自由行の第1段階は、12月21日が施行日として指定されました(公報本文は年を明記しておらず、局長談話から2026年と読めます)。対象は2025年5月1日以降に就職した従業員に限られ、それより前から今の勤務先で働いている人は第2段階を待つことになります。第2段階は2027年中頃までに改正案を提出する予定という段階です。制度の内容や日程は今後変わる可能性があるため、最新は公式で要確認です。

出典

← トップに戻る