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香港の台風シーズン到来|労工処が示す「警報下の勤務態勢」──駐在員・日系企業が確認すべき給与・年休・通勤災害のルール

【ニュースの要点】

香港の労工処(Labour Department)は2026年6月6日、雇用主と従業員に対し、台風・暴雨警報の下および解除後に「合理的な勤務態勢」を整えるよう注意喚起するプレスリリースを発出しました(香港政府新聞公報 info.gov.hk、2026年6月6日)。新たな法令改正ではなく、台風シーズン開幕直前の季節性リマインダー(注意喚起)です。労工処は『Code of Practice in Times of Adverse Weather and “Extreme Conditions”(悪天候および「極端な状況」下の勤務態勢に関する実務指針)』を参考指針として改めて案内しています。

ポイントは大きく3つです。

  1. 警報解除後の段階的な職場復帰・リモート勤務(可能な場合)・出勤猶予への配慮
  2. 悪天候を理由とした賃金・手当の控除や年休・休日の削減の禁止
  3. 台風警報シグナル8号以上(Tropical Cyclone Warning Signal No. 8 or higher)の発令中における通勤災害への雇用主の補償責任

ニュースの概要

労工処のプレスリリース(info.gov.hk、2026年6月時点)が示した主な内容は次のとおりです。

  • 対象となる警報区分は、台風警報シグナル8号以上、赤色・黒色暴雨警報(Red or Black Rainstorm Warning Signal)、および「極端な状況(Extreme Conditions)」です。
  • 警報解除後、雇用主が取るべき配慮として、「段階的な職場復帰の許可」「職場復帰が困難な従業員への(可能な場合の)リモート勤務の許可」「出勤・業務再開までの時間的猶予の付与」を挙げています。
  • 悪天候を理由に、雇用主は「賃金・皆勤手当・各種手当を控除してはならず、年次有給休暇・法定休日・休息日の権利を減じてはならない」と明記しています。
  • 台風警報シグナル8号以上の発令中に、通常の直接的な経路で就業時間の前後4時間以内に通勤・帰宅する途上で負傷した場合、雇用主が雇員補償条例(Employees’ Compensation Ordinance)に基づく補償責任を負い得ると言及しています。
  • 雇用主の法的責務の根拠として、雇用条例(Employment Ordinance)、職業安全及び健康条例(Occupational Safety and Health Ordinance)、雇員補償条例などの関連条例を挙げています。

なお『Code of Practice』は同プレスリリース上で参考指針(reference guidelines)として案内されており、原文では指針自体の法的強制力の有無は明示されていません。本指針は労工処の公式サイト(labour.gov.hk)で入手可能とされています。雇用主の法的責務は、上記の各条例に基づくものと、この参考指針とを区別して捉える必要があります。

対象読者:個人と企業で「効く場所」が違います

このニュースは、駐在員個人と日系企業の人事・総務で受け止め方が分かれます。

駐在員個人への影響としては、警報下に無理に出社しなくてよい方向で勤務態勢を整えるよう雇用主に求められている点、悪天候による欠勤・遅刻を理由に賃金や皆勤手当を控除されたり年休を強制充当されたりすべきでない点が実利になります。台風警報シグナル8号以上の発令中に、通常の直接的な経路で就業時間の前後4時間以内に通勤・帰宅する途上で負傷した場合は、雇員補償の対象となり得ます。

企業(人事・総務・経理)への影響としては、各警報区分ごとの出勤・在宅・休業の扱いを事前に定め、給与計算と勤怠ルールを指針に沿って整合させる必要がある点が中心です。雇員補償保険の付保範囲や、現場系職種の安全配慮義務(職業安全及び健康条例)の確認も論点になります。

リモート勤務はプレスリリース上「可能な場合(if applicable)」とされており、小売・飲食・物流・介護など現場勤務でリモート不可の職種は対応が分かれる点に留意が必要です。

背景:台風シーズン開幕直前のタイミング

本指針は、台風シーズンの開幕直前という時宜に発出されました。The Standardの報道によると、香港天文台(Hong Kong Observatory)は2026年3月、同年の台風シーズンを「6月以降に開始し、香港から500km以内に接近する熱帯低気圧は4〜7個で平年並み」と予測しています(The Standard、2026年3月23日報道)。労工処は毎シーズン前に同種の注意喚起を行うのが通例で、今回もその一環と位置づけられます。

今すぐすべきアクション

個人向け(駐在員・帯同家族)

  • 自社の悪天候時・極端な状況時の勤務態勢ルール(出社/在宅/休業、報告のタイミング、連絡手段)を、シーズン前に確認する。
  • 台風警報シグナル8号や暴雨警報の確認手段(香港天文台アプリ「MyObservatory」、政府発表)を準備し、警報レベルごとの行動を把握しておく。
  • 悪天候を理由に賃金・皆勤手当の控除や年休の強制充当を受けた場合は、記録を残し、必要に応じて会社や専門家に相談する。
  • 台風警報シグナル8号以上の発令中に通勤・帰宅で負傷した場合は、日時・場所・経路・状況を記録し、速やかに会社へ報告する。雇員補償は通常、直接的な経路で就業時間の前後4時間以内であることが要件とされるため、経路と時刻の記録がとくに重要です。
  • 帯同家族がいる場合、子の休校時の勤務調整(在宅可否・特別休暇)について事前に総務へ確認しておく。なお学校の休校判断(教育局の発表)は本指針の対象外で、勤務の扱いとは別制度です。

企業向け(人事・総務・経理)

  • 台風シーズン開幕(6月)前に、警報区分(シグナル8号以上/赤色・黒色暴雨/極端な状況)ごとの出勤・在宅・休業・報告ルールを就業規則・社内通達として整備・更新し、全従業員へ多言語で周知する。
  • 警報解除後の段階的復帰・リモート勤務(可能な場合)・出勤猶予の社内基準を明文化する。
  • 勤怠・給与計算ルールを点検し、悪天候欠勤を理由とした賃金・皆勤手当・各種手当の控除や、年休・法定休日・休息日の強制充当が発生しない運用にする。
  • 雇員補償保険(労災保険)の付保内容と、シグナル8号以上発令中の通勤・帰宅災害のカバー範囲を保険代理店・ブローカーに確認する。
  • 現場系職種について、強風・冠水下での業務停止・再開の安全判断基準を定め、安全配慮義務(職業安全及び健康条例)への対応を確認する。
  • 労工処の『Code of Practice』原文を労工処サイトで入手し、社内ポリシーと突き合わせて不足を是正する。あわせて、香港の労工処指針・関連条例が現地運用の基準となる旨を日本本社の人事と共有しておく。

まとめ

今回の労工処の発出は、台風シーズン前の注意喚起です。警報下に無理に出社しない権利と、悪天候欠勤で給与・年休を削られない取扱いは、駐在員個人にとっての実利になります。企業側は、シーズン前に勤務態勢ポリシーを整え、雇員補償・安全配慮の漏れを潰しておくことが重要です。

なお、警報解除後の「報告までの猶予時間」など具体的な運用数値や、「極端な状況」発令中の取扱いの詳細は、プレスリリースだけでは確認しきれない部分があります。最新かつ正確な内容は、労工処の公式発表および『Code of Practice』原文で必ずご確認ください。

本記事は一般的な情報であり、具体的な給与控除の可否や、特定の負傷が雇員補償の対象となるか等の個別の案件は、香港の弁護士・労務専門家・会計事務所などの専門家にご相談ください。

出典

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