【ニュースの要点】
香港で働く多くの人が加入する退職積立制度「強積金(強制性公積金、Mandatory Provident Fund=MPF)」の2026年上半期(1〜6月)の運用成績が、選んだファンドによって大きく分かれました。MPFデータ分析プラットフォーム「MPFGo」の集計を報じた香港01(2026年7月6日)によると、基準日の2026年6月30日時点で、首位は韓国株に投資する「海通韓国基金(T類別)」の+111.41%、最下位は中国株に連動する「東亜中国追蹤指数基金」の−14.65%で、両者の差は126.06ポイントに達したとされます。同じMPF制度・同じ半年でありながら投資先で結果が正反対になったことが、加入者に「自分の口座の中身」を意識させる話題になっています。
なお、本記事の2026年の市場・ファンドの数値は、いずれも香港01(集計元MPFGo)や積金評級(MPF Ratings)の報道・発表によるもので、当サイトの独自計測ではありません。
ニュースの概要
香港01(2026年7月6日)が報じたMPFGoの集計は、比較可能な成分ファンド397本(マネーマーケットファンドと保証ファンドを除く)を対象に、2026年上半期(基準日6月30日)のリターンを算出したものです。主な結果は次のとおりです。
- 首位:海通韓国基金(T類別)=+111.41%(半年で資産がおおむね倍増した計算)。
- 2位:海通亜太基金(T類別)=+85.43%、3位:東亜(強積金)アジア株式基金=+53.74%。上位は韓国株・アジア株・アジア太平洋株のファンドが独占し、滙豊(HSBC)、永明(Sun Life)、宏利(Manulife)傘下のアジア株ファンドも上位に入ったとされます。
- 最下位:東亜中国追蹤指数基金=−14.65%。下位は香港株・中国株ファンドに集中し、恒生中国企業指数基金=−14.37%、宏利MPF恒指ESG基金=−11.47%と続いたと報じられています。
首位と最下位の差は126.06ポイント。香港01は「半年で100万香港ドル(HK$)を投じた場合、理論上は最大で126万香港ドルの資産差が生じ得る」と例示していますが、これはポイント差をそのまま金額に置き換えた単純化した理論値であり、実際の個人の損益を示すものではありません。
一方、別の集計主体である積金評級(MPF Ratings)は、2026年上半期のMPF全体のリターンを5%超と見込み、年初来(1〜6月)の投資収益は約888億香港ドル(HK$88.8 billion)に上ると発表しています(2026年6月26日・7月7日付リリース)。アジア株が牽引し香港ローカル株は相対的に低迷、という全体傾向は香港01の報道とも整合します。MPF全体では「悪くない半年」でも、選んだファンド次第で大きな差がついた、という構図です。
読みどころ:同じ制度でも「中身」で結果が変わる
MPFは多くの人にとって「毎月の給料から天引きされ、雇用主も同額を積み立ててくれる自分のお金」です。ところが、加入時に選んだファンドをそのまま放置している人は少なくありません。今回のニュースが在住日本人にとって「自分ごと」なのは、同じMPFという枠内でも、選んだファンド次第で半年の成績が+111%と−14.65%に分かれるという極端な差が、数字で示されたからです。
香港01は「ファンド名は必ずしも実際の投資リスクを反映しない」ため、加入者は自分のファンドが実際にどの市場・企業・産業へ投資しているかを理解する必要がある、と指摘しています。ただし「今回成績が良かったから乗り換える」という後追いには注意が必要です。過去半年の急騰実績が今後を保証するわけではありません。本記事は確認・点検のきっかけとしての情報提供であり、特定のファンドを勧めるものではありません。
背景:韓国・アジアのテック株が急騰、香港・中国株は軟調
上位を独占したのは韓国株・アジア株のファンドでした。香港01によると、韓国の代表的な株価指数KOSPIは2025年末の約4,216ポイントから2026年6月末の約8,476ポイントへ、半年で約2倍に上昇しました。世界的な半導体・AI(人工知能)需要が相場を牽引し、アジア株ファンドの多くが台湾積体電路製造(TSMC)、サムスン電子、SKハイニックスといった大型テック株を厚めに保有していたため、AI投資サイクルの恩恵を直接受けたと説明されています。
反対に、香港株・中国本土株のファンドは軟調でした。企業業績の回復ペースや内需の弱さ、リスク選好の低下などから、相対的に振るわなかったとみられます(いずれも香港01の2026年7月6日の報道による)。
MPFとは:在住日本人はどう関わるか
MPFは2000年12月に導入された、香港の就労者向けの強制加入の退職積立制度です。監督するのは香港強積金局(強制性公積金計劃管理局、Mandatory Provident Fund Schemes Authority=MPFA)で、原則18〜64歳の従業員・自営業者が対象。資産の大半は各人が選んだファンドで運用されます。以下は香港強積金局(MPFA)公式サイトの記載(2024〜2025年時点)に基づく基本的な仕組みです。
- 拠出:従業員・雇用主がそれぞれ「関連収入(relevant income)」の5%を毎月拠出します。下限はHK$7,100/月(未満なら従業員側の拠出は不要、雇用主は5%を拠出)、上限はHK$30,000/月で、強制拠出は各側で月最大HK$1,500です。
- 加入・帰属:従業員は連続60日以上の雇用で加入対象。新規従業員は最初の30日間は従業員側の拠出が猶予されます。雇用主拠出による強制拠出分は、支払時点で従業員に即時帰属(vested)します。
- 免除:香港に13か月を超えない期間の就労目的で入境した人や、香港域外の退職制度の加入者は「免除対象者(exempt persons)」として加入を免除され得ます。短期の日本人駐在員や本社制度でカバーされる人が該当し得ますが、13か月を超えて就労し海外制度の対象外なら、その後60日以内に加入が必要になり得ます。個別の該当性は必ず確認してください。
現地採用・自営・長期滞在で香港で働く在住日本人の多くは、この制度の当事者です。駐在員は、勤務期間や本社制度の有無によって、拠出者か免除対象かが分かれます。
年央の点検ポイント(任意)
MPFは締切のある手続きではありませんが、上半期が終わる年央は、運用状況を落ち着いて確認しやすいタイミングです。以下は一般的な情報であり、投資助言ではありません。
個人(現地採用・自営・長期滞在の当事者、駐在員)
- MPF口座にログインし、加入ファンドと上半期の実績・現在の資産配分を確認する。
- 「ファンド名」ではなく、実際の投資対象(地域・セクター・主要銘柄)を目論見書などで把握する。
- リスク許容度や退職までの期間に照らして偏りを点検し、必要なら年1回程度のリバランス(資産配分の調整)を検討する。過去の急騰を追う乗り換えは避けるのが一般的な考え方です。
- 駐在員は、自分がMPFの加入者か免除対象かを、人事や専門家に確認する。
日系企業(雇用主として)
- 従業員へのMPF年次点検の案内は中立的に。特定ファンドの推奨は投資助言リスクがあるため、「中身を確認しよう」という情報提供にとどめるのが無難です。
- 新規採用者の拠出開始タイミング(30日の猶予・60日ルール)と拠出額の計算が適正かを確認し、駐在員の免除該当性や13か月超の就労での加入要否を専門家と整理しておく。
まとめ
2026年上半期のMPFは、全体では5%超のリターンが見込まれる(積金評級=MPF Ratingsの2026年6月26日付発表による)「悪くない半年」でありながら、韓国株ファンドの+111.41%から中国株ファンドの−14.65%まで、選んだファンドで結果が大きく分かれました(香港01の2026年7月6日の報道による)。制度は強制でも、運用結果は自己選択・自己責任という性格を、あらためて示した半年です。まずは自分の口座の中身を知ることが出発点になります。
なお、MPFのファンド成績や市場の数値は日々変動し、拠出の上限・下限や免除の条件などの制度も改定され得ます。最新の情報は、香港強積金局(MPFA)や各運営会社の公式情報で必ずご確認ください。本記事は一般的な情報であり、個別の投資・年金判断や、駐在員の加入義務・免除該当性、企業の拠出計算・税務/労務の判断については、資格のある専門家にご相談ください。
出典
- 〔香港01〕強積金|MPF半年結 十大升幅清一色投資呢類資產 冠軍飆111%!(2026年7月6日)(閲覧日:2026年7月9日)
- 〔積金評級 MPF Ratings〕MPF Ratings 公式サイト・プレスリリース(2026年上半期リターン5%超見込み/年初来投資収益 約888億香港ドル)(閲覧日:2026年7月9日)
- 香港強積金局(MPFA)Mandatory Contributions(強制拠出の仕組み)(閲覧日:2026年7月9日)
- 香港強積金局(MPFA)MPF Coverage(加入対象・免除)(閲覧日:2026年7月9日)

