医療・健康

香港は夏もインフルエンザ流行期 小児の重症例9件・7歳男児が死亡

香港は2026年6月下旬に季節性インフルエンザの流行期に入り、夏休みの最中に子どもの重症例が積み上がっています。衞生署衞生防護中心(Centre for Health Protection, CHP)が2026年8月12日に発表した内容によると、流行入り以降の小児の重症例は累計9件。うち1件は8月4日に亡くなった7歳の男児で、CHPは「2026年に入って香港で初めての小児インフルエンザ死亡例」としています。

日本の感覚では夏はインフルエンザの警戒対象から外れがちですが、香港は流行の山が冬と夏の年2回あります。一方で2026/27年度の政府接種計画はまだ始まっておらず、先に動き出したのは学校接種の同意手続きの電子化だけ、という状態です。

8月12日の発表:生後17か月の女児が危篤、小児の重症例は9件に

CHPが2026年8月12日に公表したのは、これまで健康だった生後17か月の女児の症例です。8月9日に発熱と咳が出て、翌10日に私立クリニックを受診。同日中に容体が悪化して呼吸困難となり、伊利沙伯醫院(Queen Elizabeth Hospital)の救急部を経て、呼吸窮迫と低血圧のため小児集中治療室(ICU)に入りました。診断はA型インフルエンザによる重症肺炎と敗血症性ショックで、同日時点で危篤(critical)です。この女児は2025/26年度の季節性インフルエンザワクチンを接種していませんでした。

あわせて示されたのが、6月下旬の流行入り以降の小児重症例が累計9件になったという数字です。内訳は死亡1件、回復して退院3件、容体が安定1件、重篤(serious)2件、危篤(critical)2件(いずれもCHP発表、2026年8月12日時点。容体は日々変わります)。これは小児に限った数字で、成人を含む香港全体の重症例数ではありません。今季の主な流行株はA(H1)とA(H3)で、CHPは現時点で顕著な遺伝子変異は検出されておらず、症状の重篤化や抗ウイルス薬への耐性につながるものではないとしています。

死亡した7歳男児はワクチンを接種済みだった

9件のうち唯一の死亡例が、8月4日に亡くなった7歳の男児です。CHPの8月3日の発表によると、これまで健康だった男児は7月27日に咳と鼻水、8月1日に発熱があり、8月3日に急変。瑪嘉烈醫院(Princess Margaret Hospital)の救急部から小児ICUに移り、A(H3)型インフルエンザに伴うショックと脳症(encephalopathy)と診断されました。死亡が確認されたのは翌8月4日で、CHPが同日に発表しています。

ここは誤解が広がりやすいので、はっきり書いておきます。この7歳男児は2025/26年度の季節性インフルエンザワクチンを接種済みでした(2026年8月3日のCHP発表に明記)。未接種だったのは8月12日に発表された生後17か月の女児のほうで、両者は別の症例です。「打っていなかったから重症化した」という説明は、この死亡例には当てはまりません。ワクチンは重症化や合併症のリスクを下げますが、感染も重症化もゼロにはできない――今回の2件はその両面を示しています。接種の有無にかかわらず、悪化のサインを見逃さないことが同じくらい重要です。

香港のインフルエンザは「年2つの山」

CHPの季節性インフルエンザ解説ページは、香港での流行は通常1月から3月または4月と、7月から8月の2つの時期に多いと説明しています(2026年8月13日閲覧)。冬に加えて真夏にもう一つの山が来るのが香港の特徴で、今季はその夏の山が6月下旬に始まりました。

日本では夏にインフルエンザを警戒する習慣がほとんどないため、7〜8月は在住者が備えを外しやすいタイミングです。同ページは生後6か月以上で禁忌のない人全員に接種を推奨する一方、接種時期の目安は「毎年秋」としています。いま進行している夏の流行は、次年度の接種計画が立ち上がる前に来ている、という時間差があるわけです。

先に動いたのは「学校接種の同意書の電子化」

2026/27年度の政府接種計画は、2026年8月12日時点でまだ始まっていません。衞生署(Department of Health)は8月5日、2026/27年度計画向けの季節性インフルエンザワクチン約130万回分の調達手続きを完了したと発表しました(いずれも三価ワクチンで、注射用の不活化ワクチン、経鼻の弱毒生ワクチン、遺伝子組換えワクチンが対象)。ただし季節性流感疫苗學校外展計劃(Seasonal Influenza Vaccination School Outreach Programme, SIVSOP)、疫苗資助計劃(Vaccination Subsidy Scheme, VSS)、院舎向け接種計画の開始日・補助額・対象は、いずれも「後日公表」の段階です。

先行して動いたのは手続きのほうでした。CHPは8月11日、2026/27学年のSIVSOPで保護者の同意書を「eHealth」アプリから電子提出できるようにすると発表。学校ごとのQRコードは8月12日から各校に配布され、保護者の提出受付は8月17日に始まります。利用には保護者と子ども双方のeHealthアカウントとアプリが必要で、QRコードは在籍校のものしか使えません。学校接種は2025年12月末時点で2,300校超・全校の99%が実施した事実上の標準ルートで、CHPも8月12日の発表で、すべての学校と保護者に次シーズンのSIVSOPへの参加と早めの同意手続きを呼びかけています。

8月中にできる備え

  • 学校に子どもを通わせる世帯:8月17日の受付開始までに、保護者と子ども双方のeHealthアカウント登録とアプリの準備を済ませておく。QRコードは在籍校から配布されるものを使います(他校のコードは使えません)。
  • 子どもに発熱や咳がある場合:CHPは、呼吸困難、喘鳴、唇が青くなる、胸痛、意識の混濁、発熱が続く、けいれん、といったサインが出たら直ちに救急部を受診するよう呼びかけています(2026年8月12日発表)。
  • 接種の予定を立てたい人・企業:2026/27年度計画の開始時期や補助額は2026年8月12日時点で未発表です。秋の社内集団接種や帯同家族向けの補助を検討する日系企業の総務・人事担当も、詳細の発表を待って手配時期を決めることになります。

まとめ

2026年6月下旬の流行入り以降、小児の重症例は8月12日時点で9件、うち1件が死亡しました。死亡した7歳男児は2025/26年度のワクチンを接種済みで、ワクチンが重症化リスクを下げる一方で万能ではないこと、そして危険なサインが出たときの早期受診が同じくらい大切であることを示す事例です。2026/27年度の接種計画はまだ立ち上がっておらず、いま確実に進められるのは8月17日から始まる学校接種の電子同意書の準備までです。流行状況も接種計画の詳細も今後動きますので、最新の情報は衞生防護中心と香港政府新聞公報の公式発表でご確認ください。

出典

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