教育

香港の大学学費に居港年数要件 高等法院が扶養家族の司法審査を棄却

香港の高等法院(High Court)は2026年7月31日、受養人(扶養家族)ビザで来港した子女をもつ87家族が教育局(Education Bureau)の方針を争った司法審査の申請を棄却しました。争点は、政府資助(公費補助)の専上課程に「本地生」として進むには一定の香港居住年数が必要だとする方針です。South China Morning Post(SCMP)の報道(2026年7月31日)によると、裁判官は同方針に不合理性(irrationality)はないと判断しました。

方針は2027/28学年から適用され、出願は2026年10月に始まります。香港永久性居民(HKPR)の子女は対象外ですが、受養人ビザで子女を帯同している日本人家庭には同じ条件がかかります。

学費区分が「資助」「非資助」の2つに整理

香港政府の新聞公報「政府修訂政府資助專上課程學額和資助申請資格」(2025年7月31日)によると、政府資助の専上課程(副学位・学士・授課式(taught)の大学院課程。対象は大学教育資助委員会(UGC)資助の大学、香港演芸学院(HKAPA)、職業訓練局(VTC))の学費区分が2つに整理されました。

第一類(資助=補助あり)は、香港永久性居民身分証、入境権・居留権を示す入境事務処(Immigration Department)発行の文書、無条件逗留(滞在条件なし)のビザラベル、単程証(One-way Permit)、そして受養人ビザ/進入許可の保持者です。

ただし受養人ビザには条件が2つ付きます。(a) 入境事務処からその文書を「初めて」発給されたときに18歳未満であること、(b) 修読する課程の開講初日の直前2年間、香港に居住していたこと。両方を満たさなければ第二類(非資助)となり、学費水準は非本地学生と同水準に設定されます。移行措置として、2027/28学年入学分の居港要件は「1年」、2028/29学年入学分以降が「2年」です(同公報、2025年7月時点)。

分水嶺は「香港不在が年間90日以下」

同公報によれば、居港の証明方法は2通りです。ひとつはその期間に香港でフルタイムの通学をしていた証明、もうひとつは入境事務処の出入境記録で香港不在が年間90日を超えないことです。

日本人家庭でひっかかりやすいのは、この90日ラインです。子女を日本や第三国のボーディングスクールに通わせている、長期休暇ごとにまとまった一時帰国を重ねている、来港が遅く高校の途中から香港に来た——こうしたケースは、開講初日から逆算して先に検算しておく価値があります。

学費差は数倍規模

UGC資助課程の学費は年42,100香港ドルから3年連続で平均約5.5%引き上げられ、2026/27学年47,000香港ドル、2027/28学年49,500香港ドルとなる計画です(am730、2024年6月20日報道)。SCMP(2026年7月31日)も現行の資助学費を年47,000香港ドルと伝えています。

一方、非資助側は教育機関が設定するため一律の額がありません。報道によれば、SCMPは非資助を資助学費の約3倍と伝え、HK01(2025年7月31日)は非本地学生の学費を年16万〜20万香港ドル程度としています。資助側が2027/28学年で年49,500香港ドルとなる計画(2024年6月時点の報道値)であることと並べると、負担の水準は大きく変わります。ただしいずれも報道値であり、非資助の学費は政府が固定した額ではありません。実額は志望校の公式学費表で必ず確認してください。

対象は受養人ビザ世帯、永久性居民は対象外

大前提として、香港永久性居民の子女は今回の居港年数要件の対象外です。影響を受けるのは受養人ビザ/進入許可で滞在する子女、つまり永久性居民資格を持たない世帯です。

見落としやすいのが、第二類(非資助)には全職工作ビザ/工作許可証の保持者「本人」や、優秀人才入境計画・資本投資者入境計画などのビザ保持者本人も含まれる点です(同公報)。就労ビザのまま自身が香港の大学院進学を考えている方は、志望課程がUGC資助課程かどうかと学費区分を大学に確認しておくと安全です。

なお同公報の第一類要件は受養人ビザ/進入許可全般への条件として書かれており、親のビザ種別を人材誘致計画に限定していません。報道はいずれも人材計画家庭の文脈で説明しているため、細目は教育局の案内で確認するのが確実です。

背景にある「考試移民」

方針の直接の動機は、いわゆる「考試移民(試験移民)」への対応です。人材誘致計画で来港した親が、子どもを実際には香港に住まわせないまま香港DSE(中学文憑試)を受験させ、「本地生」として資助学額に応募する例が問題視されました。HK01(2025年7月31日)によると、人材誘致計画で来港した18歳以下の受養人は2024年時点で約5.5万人に上る一方、ローカル学生向けの大学学額は約1.5万席。受養人で資助学額に進んだ人数も2022/23学年62人、2023/24学年68人、2024/25学年185人と推移しています。

従来のJUPAS(大学聯合招生辦法)の「本地生」定義は保持する文書の種類と年齢で判定し、実際の居住年数は問われていませんでした。今回の変更は、そこに「居住実態」という物差しを足したものといえます。

出願まで時間は短い いま確認したいこと

JUPAS公式サイトには、政府方針を受けて2027年のJUPASサイクルで対応する行政上の取り決めを実施し、詳細を2026年9月下旬に公表する旨の告知が出ています(2026年8月1日閲覧)。出願開始は2026年10月です。

  • 子女が香港永久性居民か、受養人ビザ/進入許可の保持者かを確認する
  • 受養人ビザなら、「初回」発給時に18歳未満だったかを確認する
  • 開講初日から逆算し、必要年数(2027/28入学は1年、2028/29入学以降は2年)の居港実態があるかを検算する。必要なら入境事務処に出入境記録の提供を申請し、書面で押さえておく
  • 2026年9月下旬のJUPASの告知と志望校のadmissions officeの案内で、第一類・第二類のどちらに判定されるかを出願前に照会する
  • 日系企業の人事・総務は、帯同家族の教育費補助が資助学費を前提にしていないか、赴任・帰任時期が居港年数のカウントに与える影響を点検する

まとめ

高等法院は、方針に不合理性はないとして司法審査の申請を棄却しました。永久性居民の家庭には影響しませんが、受養人ビザで子女を帯同し香港の大学進学を視野に入れる世帯にとっては、学費が数倍変わり得る話です。判決の内容は現時点で報道に依拠しており、学費額も年度によって変わります。制度の細目とJUPAS側の運用は2026年9月以降に具体化する見込みで、最新は香港政府・教育局と志望校の公式発表で必ず確認してください。

出典

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