経済

香港の家賃が過去最高水準に 賃料指数205.8で8か月連続上昇

香港の家賃が、統計上の「過去最高」に届きました。差餉物業估價署(Rating and Valuation Department, RVD)が2026年7月29日に公表した6月分の統計で、民間住宅(私人住宅)の賃料指数が205.8(暫定値)となり、1993年以降の月次系列で最高を更新しています。前月比+0.93%、前年同月比+5.05%で、上昇は2025年11月から8か月連続です。

しかも上げ幅が大きかったのは、単身・2人世帯やファミリーの住まいとして一般的な40〜100平方メートル(431〜1,075平方フィート)帯でした。夏から秋に契約更新や住み替えを控える世帯、日系企業で住宅手当(ハウジング)や赴任コストを組む担当者にとって、今年の交渉環境は例年より厳しめに見ておいたほうがよさそうです。

6月の賃料指数は205.8、コロナ前の水準も上回る

RVDの賃料指数は1999年を100とし、民間住宅の実際の賃貸契約をもとに毎月算出されます。2026年6月の全類別は205.8で、前月(2026年5月)の203.9から+0.93%。この伸び幅は2025年10月以降で最大でした。2026年6月時点の節目の数字は次のとおりです。

  • 前年同月(2025年6月=195.9)比:+5.05%
  • 2025年12月(200.5)比の年初来:+2.64%
  • 上昇の起点となった2025年10月(199.9)からの累計:+2.95%
  • コロナ前のピークだった2019年8月(200.1)比:+2.85%

従来のピークだった2019年8月の200.1は2025年11月(200.4)の時点で超えており、「家賃はコロナ前より高い」水準にすでに入っています。なお2026年4〜6月分は暫定値(統計表の「P」=provisional)で、後日改定される可能性があります。「過去最高」はRVDが月次で公表する1993年以降の系列での比較です。

上げ幅が大きいのは「中小型」――面積帯で差がつく

実感に直結するのは面積別の内訳です。2026年6月の前月比は次のように分かれました(かっこ内は6月の指数)。

  • A類(40平方メートル未満=431平方フィート未満):+0.73%(221.4)
  • B類(40〜69.9平方メートル=431〜752平方フィート):+1.18%(206.1)
  • C類(70〜99.9平方メートル=753〜1,075平方フィート):+1.08%(177.8)
  • D類(100〜159.9平方メートル=1,076〜1,721平方フィート):+1.03%(166.6)
  • E類(160平方メートル以上=1,722平方フィート以上):+0.61%(147.6)

A〜C類(中小型)は合計209.7で+0.96%、D・E類(大型)は160.2で+0.82%。伸びが目立つのは単身・2人世帯やファミリーに一般的なB類・C類で、最も広いE類の上昇が最も緩やかでした。最小のA類は2025年8月から2026年5月まで219.8で10か月横ばいが続き、6月に221.4へ動いたところです。面積区分は実用面積ベースで、平方フィート換算は資料により端数が1平方フィート程度ぶれます。

なぜこの夏なのか――人材・留学生の流入と、細る新規供給

需要側の土台は、香港政府が続ける人材・留学生の受け入れ拡大です。入境事務処(Immigration Department)の統計(2026年5月18日更新)では、2025年の許可件数は高端人才通行証計劃(Top Talent Pass Scheme)31,508件、輸入内地人才計劃(ASMTP)26,714件、非本地卒業生の就業安排(IANG)27,630件、優秀人才入境計劃(QMAS)7,101件。2026年も1〜3月で約1万8,600件が許可されています(許可件数であり、実際の来港者数とは一致しません)。

留学生では、2025年の施政報告が「2026/27学年から、政府資助の専上院校が受け入れる非本地生(自費)の上限を本地学額の40%から50%へ引き上げる」と明記しました。2026/27学年は2026年9月に始まるため、直前の6〜8月が住まい探しのピークと重なります。

供給側は逆方向です。RVDの統計では民間住宅の竣工戸数が2024年の24,261戸から2025年は18,448戸へ約24%減っており、新規供給の細りが需給を締めています。夏の品薄は季節要因だけでなく、制度と供給に裏打ちされた面がありそうです。

「+12.73%」は家賃の話ではありません

同じ日に公表された民間住宅の売買価格指数は6月に323.2(暫定値)で、前月比+0.31%、前年同月比+12.73%(13か月連続の上昇、年初来+7.88%)でした。ただしこちらは2023年10月以降で最も高い水準というだけで、過去最高ではありません(2023年春は350台)。過去最高を更新したのは賃料指数のほうです。家主から「市場は+12%上がっている」と提示された場合、それが売買価格指数の話なら、賃料の実勢(前年同月比+5.05%)とは別物として切り分けられます。

更新・手当・税で押さえておきたい3点

1. 更新交渉は自分の面積帯の数字で。 全体の+0.93%ではなく、B類+1.18%、C類+1.08%、E類+0.61%という面積別の実勢と、年間ベースの+5.05%を手元に置くほうが具体的です。

2. 住宅手当の見直しは年率で。 月次の+0.93%ではなく前年同月比+5.05%(2026年6月時点)を来年度予算の前提レンジに置いて点検を。据え置きが続くと、中小型帯を借りる社員ほど実質負担が増えます。

3. 賃貸借契約の印紙税(stamp duty)は必ず納付を。 税務局(Inland Revenue Department, IRD)の住宅家賃控除(deduction for domestic rents)は、印紙税を納付済みの書面契約であることが要件のひとつで、未加印だと控除を受けられません。薪俸税(給与所得税)の同控除は2022/23課税年度以降、基本の上限が年間10万香港ドルです。雇主から住居の提供や家賃補助を受けている場合は原則対象外で、現金の住宅手当を受け取るケースの扱いは個別に分かれます。要件はIRDの該当ページか税務の専門家でご確認ください。

まとめ

2026年6月の香港の民間住宅賃料指数は205.8(暫定値)で、月次系列としては過去最高。8か月連続の上昇で、前年同月比は+5.05%です。上げ幅は40〜100平方メートルの中小型帯ほど大きく、家計にも日系企業の住宅手当にも直接効いてきます。RVDは前月分を翌月下旬に公表するのが通例です(6月分は7月29日公表)。7月分の公表日は2026年8月時点で未確定で、暫定値は後日改定されることもあるため、最新の数値は必ず公式で確認してください。

出典

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