経済

香港政府、2026年GDP予測を3.5〜4.5%へ上方修正 中小の景況感は50割れ

香港政府は2026年8月14日に公表した「2026年半年経済報告(Half-yearly Economic Report 2026)」で、2026年通年の実質GDP成長率予測を、5月時点の2.5〜3.5%から3.5〜4.5%へ1ポイント引き上げました。上半期の実質成長率は前年同期比プラス5.1%で、約5年ぶりの高い伸びです。

ただし、同時に公表された数字を並べると「香港経済が全体として良くなった」とは言い切れません。通年のインフレ予測は据え置き、失業率は横ばい、中小企業の景況感は好不況の分かれ目である50を下回ったままです。日系企業の予算・給与改定の前提や、在住者の物価・雇用の見通しに関わる点を整理します。

発表の中身:上半期プラス5.1%、第2四半期はプラス4.3%

政府統計処(Census and Statistics Department)と政府経済顧問室(Office of the Government Economist)が示した主な数字は次のとおりです。

  • 実質GDP:第1四半期プラス5.9%、第2四半期プラス4.3%、上半期通算プラス5.1%(半期ベースで約5年ぶりの高い伸び)
  • 外需:第2四半期の財貨輸出は実質でプラス28.9%、サービス輸出はプラス3.4%
  • 内需:民間消費支出は5四半期連続の増加で実質プラス2.8%、投資支出は実質プラス4.4%
  • 雇用:季節調整済み失業率は3.7%で前四半期から横ばい、不完全就業率1.6%。フルタイム就業者(外国人家事労働者を除く)の平均月間所得は名目で前年比プラス2.3%
  • 物価:通年のインフレ予測は基調ベース2.5%・総合ベース2.6%で5月から据え置き。第2四半期の実績は基調1.7%・総合1.9%と予測を下回る
  • 住宅:第2四半期に価格がプラス3%(年初来プラス8%)、売買契約は2万2,156件と四半期ベースで14年ぶりの高水準

伸ばしているのはAI関連の輸出

上方修正の主因は外需、とくにAI関連の電子製品に対する世界的な需要です。政府は輸出の急増をこの需要で説明し、下半期もこの流れが香港の貿易と物流サービスを支えると見ています。

対外商品貿易統計(2026年8月13日発表)でも、6月の輸出数量は前年同月比プラス34.3%、上半期はプラス28.7%。6月の仕向地別では米国がプラス85.2%と突出し、台湾・ベトナム・中国本土もそれぞれ3〜6割増で、AI・半導体のサプライチェーンの中継地としての物量増と整合します。

裏を返せば、伸びは単一の要因に強く依存しています。政府自身も下振れ要因として、中東の地政学的緊張がエネルギー市場と世界のインフレへ波及する可能性、先進国の貿易保護主義、AI投資の急拡大に伴うリスクを挙げています。なお香港の貿易は再輸出(中継貿易)の比重が大きく、貿易額の伸びが域内の雇用や所得にそのまま及ぶとは限りません(この点は当サイトの見方です)。

一方で、中小の体感は「50割れ」圏のまま

政府統計処の中小企業向け月次調査(2026年8月11日発表)では、2026年7月の売上高に関するディフュージョン・インデックス(Diffusion Index、DI)は43.8で、6月の44.0から低下しました。1か月先の見通しDIは46.8。業種別では小売業が41.7から40.8へ、輸出入業が45.4から44.5へ下がっています。

DIは50が好不況の分かれ目です。政府統計処の発表で確認できた月は、2024年12月43.9、2025年1月43.1、10月44.8、2026年6月44.0、7月43.8と、1年半以上前から直近までいずれも50未満でした(間の月をすべて確認したわけではないため連続かどうかは断定できず、最初に50を割った月も確認できていません)。政府報道官は、7月の中小企業の景況感は慎重なままで、全体の雇用状況もわずかに弱含んだと述べています。

ただし「小売が弱い」わけではない

弱さの中身は業種で異なります。6月の小売業販売額(暫定値、2026年8月4日発表)は315億香港ドルで前年同月比プラス4.6%(数量ベースでプラス2.3%)、14か月連続の増加です。上半期は金額でプラス9.6%、数量でプラス7.2%。品目別では宝飾品・時計等がプラス20.1%、電気製品・耐久消費財がプラス11.3%と牽引した一方、燃料マイナス15.3%、自動車・部品マイナス4.3%、百貨店マイナス4.2%と減った分野もあります。

数量ベースで前年割れになっているのは飲食です。第2四半期のレストラン収入(暫定値、同8月4日発表)は272億香港ドルで前年同期比プラス0.4%、数量ベースではマイナス0.4%。収入の業態別ではファストフードがマイナス1.5%、バーがマイナス3.8%、その他の飲食店がマイナス2.7%でした。

つまり構図は「マクロ対小売」ではなく、AI関連の輸出・物流と資産市場、高額品が強い一方、中小事業者の体感と飲食の数量、百貨店・自動車・燃料が弱いという二極化です。

給与と物価は、どちらの数字を前提に置くか

在住者に身近なのは物価と給与です。名目の平均月間所得はプラス2.3%、第2四半期の総合CPIはプラス1.9%ですから、単純に差し引くと実質はわずかなプラスにとどまります。据え置かれた通年予測の総合2.6%が実現すれば、実質はほぼ横ばいからマイナスになる可能性もあります。ただしこれは当サイトによる単純比較で、政府が発表した実質賃金の数値ではありません。

実務では、通年予測(基調2.5%・総合2.6%)と足元の実績(基調1.7%・総合1.9%)のどちらを昇給率やコスト計画の根拠に使うかで結論が変わります。どちらを採るかを社内で先に決めておくと説明がぶれません。なお、政府が下半期のインフレをどう見込むかの具体的な根拠は、今回の発表からは確認できませんでした。

自社や取引先が香港域内の内需型(小売・飲食・対個人サービス)なら、GDPの上方修正をそのまま需要見通しや与信判断に持ち込まず、業種別のデータで別建てにするのが安全です。

まとめ

2026年8月14日時点で、政府の通年見通しは3.5〜4.5%へ引き上げられました。上半期プラス5.1%は事実ですが、牽引役は外需に偏っており、失業率3.7%・名目所得プラス2.3%・中小企業の売上DI43.8といった生活と現場の数字はマクロほど動いていません。GDPの上振れが給与や店の売上に同じだけ及ぶわけではない、という読み方が実態に近いといえます。

小売業販売額とレストラン収入はいずれも暫定値で、GDPや貿易統計も後日改定される可能性があります。次回の見通し改定の日程は本稿執筆時点で確認できていません。最新の数値は政府統計処・政府経済顧問室の公式発表でご確認ください。

出典

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