不動産サービス大手のJLLが、香港の高級賃貸住宅(luxury rental homes)の賃料は2026年に約5%上昇し、2027年も上昇が続くとの見通しを示しました。South China Morning Post(SCMP)が2026年8月26日に報じたもので、主な押し上げ要因として挙げられているのが、IPO(新規株式公開)市場の再燃と資産運用ビジネスの拡大に引き寄せられた駐在員専門職の流入です。高級物件に住む日本人駐在員や、住宅手当(ハウジングアロワンス)の水準を検討する日系企業にとっては、来年以降の住居費を左右する見通しといえます。
JLLの見通し:2026年に約5%、上昇は2027年も継続
SCMPの報道によると、JLLは香港の高級賃貸住宅の賃料について「今年(2026年)は約5%上昇し、2027年も上昇局面が続く可能性が高い」との見方を示しています。すでに数年続いてきた家賃の上昇基調が、少なくとももう1年以上は途切れないという予測です。
ここで押さえておきたいのは、この「約5%」が高級賃貸というセグメントに限った先行き予測であり、香港の賃貸市場全体の平均を指すものではない点です。市場全体の実績値としては、差餉物業估價署(Rating and Valuation Department)が公表する私営住宅賃貸指数が2026年6月時点で205.8を記録しています。新型コロナ禍で底を打った2023年1月の173.6から18.5%上昇し、SCMPによれば、指数が200の大台を継続的に上回るのはこれが初めてとされています。
つまり、市場全体としてすでにコロナ後の最高水準に達しているところへ、高級セグメントではさらに5%程度の上乗せが見込まれる、という構図になります。なお、この予測はJLLという民間企業の見立てであり、確定した数値ではありません。
なぜ上がるのか:IPO活況と資産運用業が呼ぶ駐在員
JLLが主因として挙げるのは、「再燃したIPO活動と資産運用ビジネスの成長に引き寄せられた駐在員専門職の流入」です。値上がりの背景に、金融セクターの人の動きがあるという分析です。
IPO市場の勢いは数字にも表れています。香港取引所は2025年に2,858億香港ドル(約364.6億米ドル)の調達額でグローバルのIPO調達額トップとなり、その勢いは2026年上半期も続き、調達額は2,102億香港ドルに達しました。SCMPによると、国際化を目指す中国本土企業の上場が相次いだ結果、スポンサー業務・法務・監査・コンプライアンスといった分野で人材需要が生じています。
人の流入は在留資格の面からも確認できます。外国人に発給された金融サービス関連のビザは、2025年に前年比16.9%増の2,343件となり、2022年以来の高水準となりました。引っ越し支援会社のDwellworks Hong Kongによれば、金融業界の幹部クラスの流入元としては欧州と米国が最上位を占めているとのことです。
香港の高級賃貸市場は、こうした「会社が住居費を負担する層」の需要にきわめて敏感です。金融機関の香港拠点が人を増やす局面では、供給が限られる高級物件に需要が集中しやすく、賃料が上がりやすくなります。
需要のシフト先は啓徳・将軍澳などの新興エリア
もう一つ注目したいのが、需要の中身が動いていることです。SCMPの報道では、需要は啓徳(Kai Tak)や将軍澳(Tseung Kwan O)といった新興エリアの新築物件、そしてペントハウスやタウンハウスといったタイプへシフトしつつあると伝えられています。
同じJLLの説明によれば、駐在員はこれまで中環・蘇豪(Central/Soho)、九龍站(Kowloon Station)周辺、西南九龍(South West Kowloon)、愉景灣(Discovery Bay)、東涌(Tung Chung)といったエリアに集中して住んできました。そこから啓徳・将軍澳といった新興エリアへ、選択肢が広がっているということです。設備の新しさや広さを重視するなら、これらのエリアも比較対象に入れる価値があります。
日本人駐在員・日系企業にとっての読みどころ
この予測が実務に効いてくる場面は、大きく2つあります。
一つは、契約更新や住み替えのタイミングです。上昇局面が2027年まで続くという見立てが正しければ、更新時の値上げ交渉や、より条件の良い物件への住み替えは、動くのが遅いほど不利になりやすくなります。制度上の締切があるわけではありませんが、更新月の数か月前から相場を見ておくと判断がしやすくなります。
もう一つは、日系企業の住宅手当の予算設計です。香港の駐在員コストのなかで住居費は大きな比重を占めます。市場全体の指数が過去最高水準にあり、高級セグメントではさらに5%程度の上昇が見込まれるという前提は、次年度の手当水準やグレード設定を見直す際の一つの目安になります。
いずれも「今日中にこれをしなければならない」という性質のものではありません。ただ、家賃が下がる前提で予算や住み替え計画を組んでいる場合は、想定を置き直しておく意味はあります。
まとめ
- JLLは香港の高級賃貸住宅の賃料が2026年に約5%上昇し、2027年も上昇が続くと予測(2026年8月26日報道時点)
- 主因はIPO再燃と資産運用業の拡大に伴う駐在員専門職の流入。金融サービスビザ発給は2025年に2,343件(前年比16.9%増)
- 市場全体の私営住宅賃貸指数は2026年6月時点で205.8。200の大台を継続的に上回るのは初めてとされる
- 需要は啓徳・将軍澳など新興エリアの新築物件へ広がりつつある
賃料指数は差餉物業估價署が毎月更新する変動値であり、JLLの予測もあくまで民間の見通しです。契約や予算の判断に使う際は、最新の数値を差餉物業估價署の公式発表で必ず確認してください。
出典
- 〔South China Morning Post〕More expats flock to Hong Kong, luxury home rents poised for further upswing(2026年8月26日付/閲覧日:2026年8月31日)

