経済

SHEINが香港取引所に上場 初日は一時10%安、評価額はピーク時の約4分の1に

ニュースの要点

中国で創業し、現在はシンガポールに本社を置く格安ファッション通販SHEIN(シーイン)が2026年9月1日、香港取引所(HKEX)に上場しました。売り出し価格は1株48.56香港ドルで、調達額は約136億香港ドル(約17.4億米ドル)。評価額は約263億米ドルで、2022年の資金調達時につけた約1,000億米ドルのピークから約4分の1の水準です(CNBC、RTÉ)。初日の株価は一時、売り出し価格を約10%下回る43.72香港ドルまで下落しましたが、終値は48.50香港ドルとほぼ変わらない水準に戻りました(The National)。香港市場では2026年に入り大型上場が相次ぎ、調達額はすでに2025年通年の370億米ドルを上回っていますが(CNBC、2026年8月20日)、その象徴とされた案件に買いが続かなかったことは市場心理を測る材料となりました。

増収率は1%台、赤字の主因は一過性の評価損

CNBCによると、SHEINの2026年1〜3月期売上高は90億5,000万米ドルで、ロイター配信によれば前年同期比プラス1.1%とほぼ横ばい、最終損益は9,900万米ドルの赤字(前年同期は3億9,500万米ドルの黒字)でした。ただし赤字の主因は本業の不振ではありません。ロイター配信によると、会計基準変更に伴う優先株式(convertible redeemable preferred shares)の公正価値評価損(約3億2,800万米ドル)という一過性要因で、これを除けば損益は黒字圏という計算になります。同配信は、米国の少額輸入関税免除撤廃の影響も赤字要因に挙げています。2025年通期も純利益が前年比38.7%減の20億6,000万米ドル、売上高の伸びは8%(2024年は20.7%増)となるなど、成長減速は上場前から続いていました(ロイター配信)。個人投資家向けの申込倍率は約5.6倍、機関投資家向けは約2.6倍と、香港の大型IPOとしては控えめな水準でした(RTÉ、The National)。

逆風の正体は米欧の「少額輸入」ルール変更

業績減速の背景には、米国と欧州連合(EU)が相次いで導入した輸入ルールの変更があります。米国は1件800米ドル以下の輸入品を関税免除とする「少額輸入免税(de minimis)」を撤廃し、ロイター配信によると2025年5月以降、SHEINの米国売上に悪影響が出ています。EUも低額輸入品に一律3.50米ドルの課税を導入しました(UPI)。消費者へ小包を直接送る「越境EC」の収益構造そのものが、各国の規制強化で揺らいでいます。米中間の通商摩擦や各国の輸入規制が企業の利益をどれだけ削り、香港市場がそれをどう値付けするのか。その両方が数字で表に出た出来事だと言えます。

香港在住の日本人・日系企業にとっての読みどころ

資産運用をしている方にとっては、「香港IPO市場の復調」を額面通りには受け取れないことを示す事例です。上場ラッシュが続いても個々の銘柄で買いが続くとは限らず、上場直後の株価は変動が大きい点に注意が必要です。小売・物流・EC関連の日系企業にとっては、より本業に近い話です。少額輸入免税に依存した越境ECのモデルが各国の規制強化で成り立ちにくくなる流れはSHEINだけの問題ではなく、香港を積み替え・在庫拠点とする事業や、日本から海外消費者へ小口配送を行う事業では、関税・通関コストの前提を見直す必要が出てくる可能性があります。制度の詳細・適用時期は国ごとに異なるため、自社に関わる場合は各国税関当局の公式情報でご確認ください。

まとめ

今回の上場は、調達額約17.4億米ドルという規模の大きさと、評価額がピーク時の約4分の1まで縮んだ現実が同時に表れた案件でした。直近四半期の赤字は会計上の一過性要因が大きい一方、増収率が1%台まで鈍化した背景には米国の少額輸入免税撤廃など輸入ルールの変更があります。株価・時価総額・業績は日々変わりますので、最新の情報は香港取引所の開示情報や同社の決算発表など公式情報で必ずご確認ください。

出典

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