【ニュースの要点】
香港政府は、HK$1億超の住宅用不動産取引にかかる従価印紙税(Ad Valorem Duty, AVD)の最上位税率を4.25%から6.5%へ引上げました。適用は2026年2月26日(2026-27年度予算案の発表日)以降に作成された契約文書に遡及します。香港税務局(Inland Revenue Department, IRD)の2026年5月20日付プレスリリース(2026年6月時点)で、関連法案の立法会(Legislative Council)可決が確認されています。
特に重要なのが納付の締切です。2026年2月26日〜5月28日に作成された取引は、旧税率(4.25%)で納付済みの場合でも、新旧の差額(対象額の約2.25%相当)を、IRDの請求に応じて2026年6月29日までに納付する必要があります。未納の場合は、差額の最大10倍の罰則(late stamping penalty)が科され得ます(IRDプレスリリース2026年5月20日、2026年6月時点)。
ニュースの概要
事実関係を整理します(いずれもIRD公式プレスリリース・印紙税ページに基づく、2026年6月時点)。
- 対象と税率:HK$1億超の住宅用(residential)不動産取引について、AVD第1部の最上位帯が4.25%から6.5%へ引上げ(IRDプレスリリース2026年3月4日)。
- 遡及適用日:2026年2月26日以降に作成(executed)された契約文書に適用。
- 差額納付の締切:2026年2月26日〜5月28日に作成された取引で旧税率を納付済みの分は、差額(約2.25%相当)をIRDの請求に応じて2026年6月29日までに納付(IRDプレスリリース2026年5月20日)。
- 罰則:未納の場合、差額の最大10倍。
- 影響規模:政府試算では対象は住宅取引の約0.3%、税収増は年約HK$10億(IRDプレスリリース2026年3月4日)。
- 立法経過:法案は2026年3月6日に官報掲載 → 2026年5月20日に立法会可決 → 条例(Ordinance)として2026年5月29日に官報掲載され成立済み。
誰に影響するのか(対象読者)
- 個人(駐在員・経営者個人):HK$1億超の高額住宅をすでに取得した方、またはこれから取得予定の方。とりわけ2026年2月26日以降に契約済みの方は、直接の対象です。
- 企業(日系企業の経理・税務担当):社宅・役員住宅・投資用としてHK$1億超の住宅を会社名義で保有・取得する企業。あわせて、香港の不動産保有会社をグループ内で再編しようとする企業も、後述の「グループ内救済」の動きに留意が必要です。
背景:個人には増税、企業再編には緩和(提案)という逆方向
今回の高額住宅への増税は、財政赤字下で「負担能力のある者が応分に負担する(affordable users pay)」原則に基づく税収確保策と位置づけられています。予算案発表(2026年2月26日)と同時に方針を示し、駆け込み取引を防ぐため発表日に遡及させた点が特徴です。
一方で、企業の組織再編に関わるグループ内印紙税救済(intra-group relief)については、緩和の方向が示されています。2026-27年度予算案では、譲渡当事者間の関連性を判定する最低持株要件を90%から75%へ引下げ、株式資本を持たない法人も対象に含める拡充が提案されました(IRD印紙税ページ、2026年6月時点)。香港を域内の持株・統括拠点として競争力を高める狙いです。
ただし、このグループ内救済の緩和は、2026年5月時点で「提案段階」にとどまり、修正条例は未成立(法案は立法会に未提出)です。最終的な要件・施行日・遡及の有無は、立法成立まで確定しません。確定した節税策として当て込むことはできない点にご注意ください。なお、制定前であっても、緩和後の要件を満たす移転については、IRDのStamp Officeへ事前に裁定請求(adjudication request)を提出でき、先に印紙税を払う必要はないとされています(IRD印紙税ページ、2026年6月時点)。可否はあくまで立法成立後にStamp Officeが判断します。
今すべきアクション
個人向け
- 【最優先・締切6月29日】 2026年2月26日〜5月28日にHK$1億超の住宅の売買契約文書を作成した買主・売主は、IRDからの差額(約2.25%)納付請求の有無を確認し、2026年6月29日までに納付してください。未納は差額の最大10倍の罰則対象です。
- これからHK$1億超の住宅を取得する方は、印紙税が4.25%ではなく6.5%で計算される前提で、資金計画・諸費用を組み直してください(HK$1億の物件なら、印紙税だけで約HK$650万)。
- 対象は「住宅用」かつ「HK$1億超」です。価格が境界付近の場合や、用途区分が微妙な場合は、適用税率の判断を税務専門家に確認してください。
企業向け
- 社宅・役員住宅・投資用としてHK$1億超の住宅を会社名義で取得(予定)の場合は、AVD 6.5%を織り込んで取得コストを再計算してください。2026年2月26日〜5月28日に契約済みなら6月29日の差額納付対象になり得るため、経理での確認が必要です。
- 香港の不動産保有会社や子会社の株式・資産をグループ内で移転・再編する計画がある場合は、持株要件が90%から75%へ緩和される提案を、選択肢の一つとして再検討してください。ただし現時点では未成立のため、確定的に救済を当て込まないでください。
- 緩和後の要件を満たす移転を急ぐ場合は、制定前でもStamp Officeへ裁定請求を提出する選択肢があります(先払い不要、成立後に可否判断)。提出の可否・タイミングは税務アドバイザーと協議してください。
- 再編の実行タイミングは立法スケジュールに依存します。IRDや大手会計事務所のタックスアラートで、進捗を継続的に確認してください。
まとめ
HK$1億超の高額住宅にかかる従価印紙税は4.25%から6.5%へ引上げられ、2026年2月26日に遡及して成立済みです。該当する方は、6月29日の差額納付期限を必ず確認してください。一方、企業のグループ内救済緩和(90%→75%)は方向性こそ示されたものの、2026年5月時点では提案段階で未成立であり、確定策ではありません。
印紙税率や立法の進捗、納付請求の詳細は変動・更新され得ます。最新は公式(IRD)で要確認としてください。なお、本記事は一般的な情報であり、個別の案件(対象物件の用途区分・価格境界の判定、グループ再編の救済適用可否・裁定請求の要否など)は専門家にご相談ください。
出典
- IRDプレスリリース「Government welcomes passage of Stamp Duty (Amendment) Bill 2026」2026年5月20日(AVD 4.25%→6.5%、2/26遡及、2/26〜5/28分は6/29までに差額納付、未払いは最大10倍罰則、5/29官報掲載)(閲覧日:2026年6月12日)
- IRDプレスリリース「Stamp Duty (Amendment) Bill 2026 to be gazetted」2026年3月4日(旧4.25%→新6.5%、2/26遡及、対象は住宅取引の約0.3%、税収増約HK$10億)(閲覧日:2026年6月12日)
- IRD 印紙税ページ(グループ内救済:2026-27予算案で持株要件90%→75%への緩和を提案、制定前でも裁定請求の提出可・先払い不要)(閲覧日:2026年6月12日)

