経済

香港、ファンド・FIHV・キャリー優遇税制を拡充へ|利得税改正「案」を官報公示(2026年6月)

【ニュースの要点】

香港政府の財経事務及庫務局(Financial Services and the Treasury Bureau, FSTB)は2026年6月12日、ファンド・ファミリーオフィス・キャリードインタレストの優遇税制を拡充する利得税の改正案『Inland Revenue (Amendment) (Preferential Tax Regimes for Funds, Family-owned Investment Holding Vehicles and Carried Interest) Bill 2026』を官報公示(gazette)しました(香港政府新聞公報、2026年6月時点)。主な柱は「適格投資(qualifying investments)の範囲拡大」と「付帯取引に対する5%閾値要件の撤廃」です。立法会(Legislative Council, LegCo)での一読(first reading)は2026年6月24日に予定されています(同プレスリリース時点)。

なお、これは法案(Bill)段階であり、まだ成立(制定)していません(2026年6月時点)。条文・適用範囲・施行時期は今後の審議で変わる可能性があります。

ニュースの概要

香港政府新聞公報(FSTBプレスリリース、2026年6月時点)によると、確認できる事実は以下のとおりです。

  • 改正案は2026年6月12日に官報公示された。主管は財経事務及庫務局(FSTB)。
  • 改正対象は、(1)ファンド(基金)、(2)ファミリー所有投資保有ビークル(Family-owned Investment Holding Vehicle, FIHV/家族投資控股工具)、(3)キャリードインタレスト(carried interest/附帯権益)の3つの優遇税制。
  • 適格投資(qualifying investments)の範囲を拡大する。プレスリリース本文で文脈として言及された分野は、デジタル資産(digital assets)、貴金属・コモディティの取引(trading of precious metals and commodities)、プライベートクレジット投資(private credit investment)。ただし、拡大される投資クラスの確定的な一覧はプレスリリースには列挙されておらず、確定リストは法案条文での確認が必要。
  • 付帯取引(incidental transactions)に対する5%閾値要件(the 5 per cent threshold requirement)を撤廃する(緩和ではなく撤廃)。
  • FIHV制度に類似した税務報告メカニズムと経済的実質要件(economic substance requirements)を導入する。
  • SPE(特別目的事業体)およびファミリー所有SPEに対する免税扱いを緩和する。
  • 立法会での一読は2026年6月24日に予定(プレスリリース時点)。
  • 政府は香港を「世界最大のクロスボーダー・ウェルスマネジメント(資産管理)センター」と位置づけ、ファンド・ファミリーオフィスのさらなる誘致を狙うとしている。

なお、適用開始の課税年度、遡及適用の有無、経過措置(grandfathering)については、プレスリリースに記載がなく未確定です(2026年6月時点)。適用時期は法案審議で確定する見込みです。

誰に影響するのか(対象読者の線引き)

この改正案の影響を受けるのは、限られた層です。

影響を受ける可能性がある方

  • 香港でFIHV・シングルファミリーオフィス・適格ファンド・キャリードインタレスト報酬スキームを保有、または組成を検討している富裕層の駐在オーナー
  • 香港でファンド/プライベートエクイティ(PE)/ファミリーオフィスを運営・管理する日系の資産運用・ファミリーオフィス関連企業の税務・経理・コンプライアンス担当者

直接の対象外

  • 給与所得のみの一般駐在員とその帯同家族
  • 香港に投資保有ビークルやファンド・ファミリーオフィスを持たない通常の日系事業会社(製造・商社・小売・サービス等)

個人の給与所得税(薪俸税/Salaries Tax)や、通常の法人利得税(Profits Tax)の税率・控除には関係しません。「香港の税金が変わる」という大きな話ではなく、資産運用ストラクチャに関わる方向けの専門的な改正である点にご注意ください。

背景:資産運用センター化とファミリーオフィス誘致

香港政府は近年、香港を国際的な資産運用・ウェルスマネジメントの拠点として強化する方針を掲げています。今回の改正案でも、政府は香港を「世界最大のクロスボーダー・ウェルスマネジメント(資産管理)センター」と位置づけ、ファンドやファミリーオフィスのさらなる設立・運用を呼び込む狙いを示しています(FSTBプレスリリース、2026年6月時点)。

適格投資の範囲拡大や付帯取引5%要件の撤廃は、優遇税制の適格性判定でこれまでグレーだった取引・資産を取り込みやすくする方向の見直しです。一方で、FIHV制度に類似した税務報告メカニズムと経済的実質要件が新設される点は、香港内での実体(人員・運用判断・支出など)の確保とレポーティング体制が一層問われることを意味します。優遇の拡大と管理強化が同時に進む構図です。

今すべきアクション

法案段階のため、現時点では「確定情報を待ちつつ、自社・自身のスキームの適格性を点検する」のが基本です。

個人(富裕層オーナー)向け

  • FIHV/シングルファミリーオフィスを保有・検討している場合、保有資産クラス(特にデジタル資産・貴金属・プライベートクレジット等)が改正後の「適格投資」に含まれ得るか、税務顧問に確認する。
  • 免税適格を維持するための経済的実質要件(香港内の実体・人員・支出)と、新しい税務報告義務に対応できる体制があるかを点検する。
  • 適用開始の課税年度や経過措置は未確定(2026年6月時点)。条文確定・成立後に最終判断する前提で情報収集を進める。

企業(運用関連の経理・税務)向け

  • 自社が運営・管理するファンド/FIHV/SPE/キャリー報酬スキームについて、改正後の定義・適格要件への適合状況を税務顧問とともに棚卸しする。
  • 新設される税務報告メカニズムと経済的実質要件に備え、サブスタンス(運用人員・適格資産・運用支出)の充足状況とレポーティング体制を点検する。
  • 5%閾値撤廃で取り込み可能になる付帯取引・新資産クラスの取扱いを、既存の免税ポジションの再評価とあわせて検討する。
  • 立法会の審議スケジュール(2026年6月24日一読予定)と条文確定・成立時期をモニタリングする。施行時期・適用課税年度・遡及適用の有無は未確定のため、断定的な社内アナウンスは避け、確定情報を会計事務所経由で取得してから対応方針を固める。

まとめ

今回の改正は、香港のファンド・FIHV・キャリードインタレスト優遇税制を拡充し、適格投資の範囲拡大と付帯取引5%要件の撤廃を柱とするものです。ただしまだ法案段階で成立しておらず、拡大される適格投資の確定リスト、適用課税年度、経過措置などは未確定です(2026年6月時点)。一般の給与所得駐在員には直接関係しない点も含め、過度な期待や早合点は禁物です。最新の内容は、必ず公式発表と法案条文でご確認ください。

なお、本記事は一般的な情報であり、個別の税務・法務判断については専門家(会計事務所・税理士・弁護士等)にご相談ください。

出典

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