経済

香港の外国人就労ビザ、2025年は3万1,278件 日本は国別2位

香港で外国人が働くための就労ビザ、いわゆる一般就業政策(General Employment Policy、GEP)の2025年通年の承認件数が3万1,278件だったことが、入境事務処(Immigration Department)の統計で分かりました。2026年2月13日に公表された年次レビュー「Immigration Department Review 2025」の付属資料に記載されたもので、新規申請の受理は3万3,479件です。GEPは中国本土出身者を対象外とする枠で、日本人が香港で就労する際に使う代表的なビザにあたります。

この3万1,278件は、2026年8月5日のBloombergと、これを引用した翌6日のThe Standardが「5年前の2倍超」として報じ、改めて注目されました。ただ、香港在住の日本人にとって本当に見るべきなのは、その見出しよりも国別の内訳です。入境事務処の統計ページ(2026年5月18日更新時点)によると、3万1,278件のうち日本は3,689件で、韓国(5,516件)に次ぐ2位。全体の約11.8%を占めます。しかも同じページに載る2026年1〜3月分では、日本が1,068件と韓国(1,001件)を上回り、国別で最多になっています。

「5年前の2倍」はコロナ底との比較

まず数字の読み方を整理しておきます。2020年のGEP承認は1万4,617件でした(2021年2月24日の立法会質問への政府答弁)。2025年の3万1,278件はこの約2.14倍にあたり、「5年前の2倍超」という表現自体は公式統計でも裏づけられます。

ただし、右肩上がりが続いているわけではありません。2024年はGEP新規3万7,448件受理・3万5,058件承認で、2025年の3万1,278件は前年比で約11%の減少です。滞在延長の承認も1万4,193件(2024年)から1万3,429件(2025年)へ減りました。コロナ前は2019年が4万1,289件、2018年が4万1,592件ですから、2025年は2019年比で約24%少ない水準です。

つまり「2倍」は、2019年の約35%まで落ち込んだ2020年を基準にした比較です。公式数値が示す直近の姿は「2024年にいったんピークを打ち、2025年は前年割れ」で、コロナ前の水準には戻っていません。

国別内訳では日本が2位、直近の四半期では首位

2025年のGEP承認を国・地域別に見ると、次の通りです(入境事務処 統計ページ、2026年5月18日更新時点)。

  • 韓国:5,516件
  • 日本:3,689件
  • 英国:2,472件
  • 米国:2,121件
  • インド:1,518件
  • フランス:1,187件
  • フィリピン:934件
  • オーストラリア:883件
  • カナダ:645件
  • その他:1万2,313件

さらに同ページの2026年1〜3月分では、全体6,974件に対し日本が1,068件で国別最多。韓国1,001件、英国461件、米国432件が続きます。2025年の四半期平均は全体で約7,820件、日本で約922件でしたから、全体が伸び悩むなかで日本発だけがペースを上げている構図です。ただし四半期の数字は季節性の影響を排除できず、通年の見通しを断定することはできません。「2026年1〜3月時点で日本が最多」と、時点を切って押さえておきましょう。

業種別の最多は金融ではない

「金融が押し寄せている」という印象を持っている方もいるかもしれませんが、2025年の業種別承認で最多は娯楽・スポーツの4,517件です(入境事務処 統計ページ、2026年5月18日更新時点)。次いで芸術・文化3,364件、学術研究・教育2,670件と続き、金融サービスは2,343件で全体の約7.5%にとどまります(ほかに商業・貿易1,499件、エンジニアリング・建設1,180件、IT416件など)。

一方、2026年1〜3月では金融サービスが678件と、同期全体の約9.7%まで構成比を上げています。The Standard(2026年8月6日)によると、金融分野の外国人就労ビザは17%増え、2022年以降の最高水準になりました。同紙がBloombergの報道として伝えるところでは、バンク・オブ・アメリカやHSBCが香港の上級管理職体制を再構築中とされます。ただし入境事務処が公開しているのは2025年通年と2026年1〜3月分で、17%という伸び率そのものは公式では確認できません。同紙は誘因として、低い税率に加え、ファンドマネージャーのキャリードインタレストを利得税(profits tax)から免除する法改正、IPO市場の回復、セントラルのグレードAオフィスの稼働改善を挙げています。金融の戻りは、統計上はこれから確かめる段階と言えそうです。

家賃と学校の逼迫はGEPだけでは説明できない

The Standard(2026年8月6日)は、ミッドレベルズ・イーストで14%、ザ・ピークで13%の賃料上昇があり、香港全体の平均である約10%を上回ると報じています。名門インターナショナルスクールでは席の競争が激しく、待機リストが最長1年に達するとも伝えています。ただし同記事には賃料データの基準時点も提供元も明記がないため、参考値として受け止めるのが安全です。

ここで押さえておきたいのは、GEPが香港の人材流入の一部にすぎない点です。2025年の承認は、高才通(Top Talent Pass Scheme)が3万1,508件、本土人材向けのASMTP(Admission Scheme for Mainland Talents and Professionals)が2万6,714件、非現地卒業生向けのIANG(Immigration Arrangements for Non-local Graduates)が2万7,630件、優秀人才入境計画(QMAS)が7,101件、補充労働計画(Enhanced Supplementary Labour Scheme)が4万694件。住宅やインター校の席という同じパイを取り合っているのはこれら全体であり、GEPの3万件だけで「増えた・減った」と判断すると生活実感とずれます。なお、賃料上昇や学校の待機と就労ビザ承認数の因果関係は、公式統計でも報道でも定量的に示されてはいません。住宅もインター校も供給側の制約を受けており、流入だけで説明できる話ではない点は付け加えておきます。

まとめ

2026年8月時点の要点は3つです。(1)2025年のGEP承認3万1,278件は2020年比で約2.14倍だが、2024年比では約11%減・2019年比では約24%減。(2)国別では日本が3,689件で2位、2026年1〜3月は1,068件で最多。(3)香港への人材流入はGEP以外の複数スキームの合計で見る必要がある——この3点です。

国別・業種別の内訳は入境事務処の公式ページに掲載され、四半期単位の数値が定期的に更新されています。数値は今後の更新で変わりますので、最新は公式でご確認ください。

出典

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