【ニュースの要点】香港の保険業界団体である香港保険業聯会(Hong Kong Federation of Insurers、HKFI)がまとめた「危疾保険」(きしつほけん=日本でいう重大疾病保険、Critical Illness Insurance)の定義を業界で統一する準則が、2026年9月1日に施行されました。〔星島日報〕の2026年9月10日付報道によると、対象は重大疾病16項目と早期段階の疾病5項目の計21項目で、中国語・英語の双方で定義をそろえ、商品ごとにばらばらだった保障内容を比較しやすくすることが狙いです。ただしこれは業界の自主的な枠組みで、採用するかどうかは各保険会社の任意とされています。さらに同報道では、保険比較サイト10Lifeが販売中の主流商品7本と照らし合わせた結果として、統一された定義はあくまで最低限の共通ラインにすぎず、がんや心臓治療の一部では従来の市場慣行より請求条件が厳しくなっている、という指摘が紹介されています。
21項目の定義を業界でそろえる自主ルール
今回の準則は、重大疾病16項目と早期段階で見つかった疾病5項目の計21項目について、保険金支払いの対象となる病気の定義を中国語・英語の両方で共通化するものです。香港では同じ「がん」「心筋梗塞」という名前の保障でも、保険会社ごとに定義や請求条件の文言が異なり、消費者が商品を横に並べて比べにくいという問題が長く指摘されてきました。定義がそろえば、少なくとも同じ物差しで比較できるようになります。報道の中で10Life側も、統一そのものは比較の基準を提供する点で支持できる方向性だとコメントしています。
なお、HKFI公式サイト上では準則の原文(PDFなどの一次資料)を2026年9月時点で確認できていません。本記事の内容は〔星島日報〕の報道に基づくもので、条文レベルの正確な文言は各保険会社またはHKFIの公式情報でご確認ください。
「定義の統一=保障が手厚くなる」ではない
今回の報道の核心は、定義の統一が保障水準の底上げを意味しないという点です。統一基準は業界の最低限の共通項であり、これまで各社が独自に設けていた、より緩やかな(=加入者に有利な)条件がそのまま残るとは限りません。10Lifeは、次の2点でむしろ従来の市場慣行より厳しい内容になっていると指摘しています。
がん:切除後の病理報告を求める書きぶり
統一された定義では、がんの診断を裏づける資料として、腫瘍を切除したあとの最終的な組織病理学報告(切り取った組織を顕微鏡で調べた検査結果の報告書)を求める内容になっているとされます。この場合、抗がん剤治療・分子標的薬・ホルモン療法が中心で、外科手術による切除を行わない進行がんの患者は、求められる証明をそろえにくくなる可能性があるという指摘です。
冠動脈形成術:狭窄60%以上に統一
心臓の血管の狭くなった部分をカテーテルで広げる冠動脈形成術(広東語で「通波仔」と呼ばれる治療)については、主要な冠動脈の狭窄が60%以上(枝分かれした細い血管は対象外)という条件に統一されました。10Lifeが比較した7商品はいずれも狭窄50%を基準としており、統一基準のほうが請求のハードルは高いことになります。
採用は各社の判断、「9月から全商品が同じ」ではない
もう一つ押さえておきたいのが、この準則が強制ではなく業界の自主的な枠組みだという点です。報道によれば採用は各保険会社の任意で、2026年9月時点でどの会社が採用した(または採用予定か)は明らかになっていません。つまり「2026年9月1日から香港のすべての危疾保険が自動的にこの定義になる」わけではなく、実際の保障内容は引き続き商品ごとに異なります。また、既存の契約に影響が及ぶのか(新規契約のみに適用されるのか)についても、確認できた報道には明記がなく、現時点では未確定です。
加入・見直しを検討しているなら確認したい3点
香港は医療費が高く、危疾保険は在住日本人にも需要の大きい保険です。新規加入や乗り換え、団体保険の見直しを検討している場合は、保険会社や代理店に次の点を具体的に確認しておくと判断しやすくなります。
- その商品がHKFIの統一定義を採用しているか(採用は任意のため、商品ごとに扱いが異なりえます)
- がんの請求に切除後の組織病理報告が必須とされているか。手術を伴わない治療でも支払い対象になるか
- 冠動脈形成術の請求条件は狭窄50%か60%か。枝分かれした血管は対象に含まれるか
日系企業で団体医療保険・危疾保険を扱う人事総務のご担当者は、更新のタイミングで保険仲介会社に同じ点を確認しておくと、従業員への説明がしやすくなります。
まとめ
定義の統一は「比べやすくなる」という点では前進ですが、それが自動的に「保障がよくなる」ことを意味しないというのが、今回の報道の要点です。2026年9月時点では採用した保険会社名も公表されておらず、商品ごとの条件を個別に読む必要があります。準則の採用状況や条文は今後変わりうるため、最新はHKFIおよび各保険会社の公式情報で要確認です。
出典
- 〔星島日報〕保險危疾定義準則9月生效 10Life指部分新標準反而更嚴(2026年9月15日閲覧)

